カメラのローリングシャッター現象を防ぐには、電子シャッターを避け、読み出しの速い撮影モードやグローバルシャッター搭載機を使うのが基本です。あわせて、速い動きの被写体を追って急にパンしない、カメラをしっかり固定するなど、撮影中の動きを小さくすると効果があります。
ただし、シャッター速度を速くするだけでは、ローリングシャッター特有の「被写体や建物が斜めになる」歪みを完全には防げません。シャッター速度は主に被写体ぶれを減らす設定であり、歪みにはセンサーの読み出し速度やシャッター方式が大きく関係します。
ローリングシャッター現象とは
ローリングシャッター現象とは、カメラのセンサーを上から下、または左右へ順番に読み出す間に被写体やカメラが動くことで、画像が部分的にずれて写る現象です。
たとえば、走行中の車のホイールがゆがんだり、建物の柱が斜めになったり、動画でカメラを左右に振った際に映像が波打つように見えたりします。高速で回転する羽根やプロペラ、速く横切る車両、激しいパン撮影で発生しやすい現象です。
ローリングシャッターを防ぐ基本的な対策
電子シャッターを使わず、機械式シャッターを選ぶ
静止画でローリングシャッターが目立つ場合は、まず電子シャッターから機械式シャッターへ切り替えます。電子シャッターでは、センサーの各画素を順番に読み出すことで露光するため、動く被写体が歪みやすくなります。
機械式シャッターでは、シャッター幕によって露光するため、電子シャッター使用時より歪みを抑えられる機種があります。ただし、機械式シャッターでも撮影方式やシャッター速度、カメラの構造によって結果は異なります。
- 静止画の設定で「電子シャッター」「サイレント撮影」をオフにする
- 「メカシャッター」「機械式シャッター」を選ぶ
- 電子先幕シャッターしか選べない条件では、機械式を選べるか確認する
シャッター方式の名称や選択肢はカメラによって異なるため、使用中の機種で「サイレント撮影」「電子シャッター」「メカシャッター」などの項目を確認してください。
読み出しの速いカメラやグローバルシャッターを選ぶ
ローリングシャッターの歪みは、センサー全体の読み出しに時間がかかるほど発生しやすくなります。そのため、購入時に比較できる場合は、センサーの読み出し速度が速いカメラを選ぶと対策になります。
グローバルシャッターは、センサーの画面全体を同時に露光できる方式です。画面の上から下へ順番に露光する一般的なローリングシャッター方式より、動く被写体やカメラの動きによる形状の歪みを抑えやすい特徴があります。
ただし、カメラの画素数や動画解像度、フレームレート、読み出し範囲によって結果は変わります。「グローバルシャッター搭載」や「読み出しが速い」という情報だけで、すべての条件で歪みが発生しないと判断しないことが大切です。
カメラを急に動かさない
動画撮影や流し撮りでは、カメラを左右へ素早く振るほど、画面内の位置によって記録される時刻の差が大きくなります。急なパンやチルトを避け、できるだけ一定の速度でゆっくり動かすと歪みを抑えやすくなります。
三脚や一脚、ジンバルなどを使ってカメラの不要な揺れを減らす方法も有効です。ただし、カメラを固定しても、被写体そのものが速く動いている場合の歪みまでは防げません。
被写体との距離や撮影方向を見直す
横方向へ速く移動する被写体は、ローリングシャッターの歪みが目立ちやすい傾向があります。可能であれば、被写体の正面や斜め前から撮影し、画面内を横切る速度を小さくします。
被写体から距離を取ると、同じ速度で動いていても画面上の移動量が小さくなる場合があります。撮影位置を変えられるときは、被写体の動く方向、距離、画角を組み合わせて調整します。
シャッター速度を速くする効果と限界
シャッター速度を速くすると、被写体の移動による「ぶれ」は減らせます。しかし、センサーの読み出しに時間がかかるカメラでは、速いシャッター速度にしても、被写体の形が斜めになるローリングシャッター歪みが残ることがあります。
たとえば、1枚の写真の上部と下部が異なる時刻に記録される状態は、シャッター速度を速くしても、読み出しが順番に行われる限り変わりません。
したがって、設定は次のように分けて考えます。
| 困っている現象 | 優先する対策 |
|---|---|
| 被写体がぼやける | シャッター速度を速くする、撮影時の手ぶれを減らす |
| 建物や柱が斜めになる | 電子シャッターを避ける、読み出しの速い機種を使う、カメラの動きを抑える |
| 動画をパンすると画面が波打つ | パンをゆっくり一定にする、三脚やジンバルを使う、読み出しの速いモードを選ぶ |
| プロペラや車輪が不自然に見える | 機械式シャッターを試す、被写体の動きと撮影方向を見直す |
動画撮影でできるローリングシャッター対策
動画では、撮影前にカメラの読み出し速度と撮影モードを確認することが重要です。同じカメラでも、解像度、フレームレート、クロップの有無によって、センサーを読み出す範囲や時間が変わる場合があります。
- 電子シャッターの静止画モードと、動画撮影時の読み出し方式を区別する
- 使用する解像度やフレームレートでテスト撮影する
- 選択できる場合は、センサーの読み出しが速い撮影モードを使う
- パンやチルトを急に行わず、一定の速度で動かす
- 動きの速い被写体を画面の端から端まで追い続けない
動画のシャッター速度を速くすると、動きのぶれは減りますが、映像が硬く見えたり、動きが滑らかに見えにくくなったりすることがあります。ローリングシャッター対策だけを目的に、常に極端に速いシャッター速度へ変更するのは適切とは限りません。
撮影前に確認する手順
- 撮影対象を決め、車両、回転物、速く動く人物など、歪みが出やすい被写体か確認します。
- 静止画では、電子シャッターやサイレント撮影が有効になっていないか確認します。
- 動画では、使用する解像度とフレームレートを設定し、その条件で試し撮りします。
- 柱や建物の縁など、形の変化を確認しやすいものを画面に入れて、パン撮影を試します。
- 歪みが目立つ場合は、パンの速度を下げ、撮影位置や画角を変えます。
- 改善しない場合は、機械式シャッター、別の撮影モード、読み出しの速いカメラを検討します。
カメラの仕様表に「ローリングシャッター時間」「センサー読み出し時間」「全画素読み出し時間」などの情報が掲載されている場合は、使用する撮影条件に合う数値を確認します。数値が分からない場合は、実際の被写体を使ったテスト撮影で判断するのが確実です。
撮影後に補正できる範囲
動画編集ソフトや写真編集ソフトには、ローリングシャッター補正機能が搭載されている場合があります。軽い歪みであれば、補正によって見た目を改善できることがあります。
ただし、撮影時に失われた形状や画面内の時刻差を完全に元へ戻せるとは限りません。補正によって画面の一部が切り取られたり、映像が不自然に変形したりする場合もあるため、まずは撮影時の設定とカメラの動きを見直すのが基本です。
ローリングシャッター対策の結論
静止画では、まず電子シャッターをオフにして機械式シャッターを試します。動画では、急なパンを避け、カメラを安定させたうえで、使用する撮影モードの読み出し速度を確認してください。
シャッター速度を速くするのは被写体ぶれ対策には有効ですが、ローリングシャッターの歪みを直接解決するとは限りません。動きの速い被写体を頻繁に撮影するなら、読み出しの速いカメラやグローバルシャッター搭載機を選ぶことが、より根本的な対策になります。







